Vol.0

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  今日は記念すべき高校進学の日……そう、入学式だ。 体育館に向かっているらしい、柚乃の仲間の新入生たちが、彼女のいる中庭の渡りローカをぞろぞろと歩いていった。 しかし、彼女は立ち上がらない。 ただボーッと、よく自分が高校に上がれたものだ、と桜の香りを感じながら考えていた。 「こんな日は、あったかいトコでお昼寝するのが一番なのになぁー」 空を仰いで口を尖らせ、彼女は呟いた。 分かってはいるのだ。 そろそろここから立って、体育館へ行かなければいけないことくらい。 さもなくば、せっかくみんなが現れる前から、いそいそと学校に来ていたはずなのに、入学早々 遅刻という大恥をさらしてしまうことになる。 「それだけは避けたいなぁ……」 うーん、と唸りながら、柚乃は伸ばした足をバタつかせた。 「こぉんな天気のいい、気持ちいい日に、あんなにせかせかと動いてるなんて……。さすがは経済大国、日本だわねぇ……」 と、渡りローカを歩く新入生たちを遠い目で見ながら、ため息混じりに呟く。 社会の成績がオール2だった女が、なにを日本の情勢を語っているのかと思うが、そこはあえてスルーしよう。  
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