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急がなくてもいい、と言うリテオの胸に、息を切らせてステラは飛び込んだ。
ごめんなさい、ごめんなさい、と何度も呟きながら、頭を強く押しつける。
震える身体が、彼女がいかに心細く過ごしたかを、どんな言葉よりも雄弁に伝えた。
「大丈夫、時間ができた。君が心配することはなにもない」
そうじゃなくて、と今にも消え入りそうなステラの声
リテオは、潮風になびく金の髪を優しく撫でてやる。指先に貝の髪飾りが触れた
「君には、すまないことをした。オレもできることなら、君に会ってから仕事に行きたかったのだが、その暇がなかった」
海賊がスタンブリックへ進撃準備をしているという一報を聞いて、自警団中隊長のリテオは全てを投げ捨てるようにして城壁砦へと赴いた。
死力を尽くした戦いに向け、寝食を忘れるほどに防衛戦の準備に没頭していたのだが、ある日リテオの元に一通の手紙が届く。
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