197人が本棚に入れています
本棚に追加
/343ページ
祖母は自分の中の母親代わりだった。
母親代わり、と言ってしまうと祖母に申し訳なくなるが、確かに自分は祖母の事をそれくらいに慕っていた。
幼心に母も父もいなかった自分には、愛情という物をはっきりと知らなかった。
なにが愛なのか、なにが温もりなのか――――
祖母が、始めにそれを教えてくれた。
彼女がいなければ自分はここにはいない。
こうして虚無感を覚える事もなかった。
悲しみは湧いて来ない。
何故なのかは、自分にも分からない。
この虚無は悲しみの先にある物だからなのだろうか。
………もう、いいや。
初めてそんな気持ちになった。
祖母を奪った人間はもうこの世にはいないし、恨みを晴らそうとも思わない。
とにかく今は、もうこれ以上何も考えたくなかった。
だが、そんな中ふとこんな事を思ってしまう。
……自業自得………か。
正直、自分がこうして悲しみに打ちひしぐ資格は無い。
本当は自分がこうして生きてる資格すら無いのだ。
自身をクリーチャと認識しても、そう考えてしまう。
しかしそれも今やどうでもいい。
今こうして心で呟いている事も、白紙の上でインク切れのペンを走らせているのと同じなのだ。
最初のコメントを投稿しよう!