小さな自分

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昭和45年 広島の中心部に近い空の下で小さな産声を上げた。 看護婦「元気な男の子ですよ」 若き父と母はその男の子に名前を付けた。 当時、父は22歳。母は21歳。 父「今日から、お前は{貴美}じゃ」 母はベットの上でぐったりと、しつつも優しく微笑んでいた。 やがて男の子は3つになり 妹が生まれる。 男の子が少しづつ大きくなるにつれ父と母の仲は、不仲になって行く。 男の子は、何故だか分からないまま小学生へと… 初めての夏休み。 男の子はワクワクとしながら母へ自慢する。 「僕、こんなに長いお休み初めて」と 母は黙って微笑む。 しかし。楽しい筈の夏休みが、一遍して地獄の夏休みになる。 その日を境に父の態度が、変わり始める。 {何故?} 仕事から帰宅してきた父。母に向けて一言!? {晩飯の支度はまだか!?} 母{ごめんなさい、私も仕事で遅くなって} 父{ふん!女の癖に仕事で遅くなってじゃと!言い訳はいらん!酒だせ!} 自分と妹はテーブルの端で小さく震えていた。 父はお酒が入ると暴力を振るい始める。1杯2杯3杯と…お酒を浴びる様に飲む。やがて父の目付きが変わり始める。 その目線は小さな自分達へ。そして髪の毛を鷲掴みにされ殴られる。 泣き始める自分。 訳も分からず悲鳴を上げる母。青白く為り震えて固まり泣き叫ぶ妹 。 気がつくと。唇の切れた母の泣き顔。 その母に しがみつく様に抱き抱えられて居る妹。 その側で酔い潰れて眠る父 。 {イテテテ} そっと自分の顔を鏡で覗いてみた。顔中アザだらけ。 {お母さん。僕、顔が痛い} 母はそっと自分を抱き寄せる。
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