第十八章-旅の記憶-

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長い話の最中、直接口を挟む者は居なかった。 そしてそれは今も続いている。 では、静寂か。というとそうではない。 途中、スコールが「それであの時……」と、恐ろしいほど小さい声で呟いていたり、クラウンが「ライ……アレクセイ……?」と訝しげに首を傾げたりいたりしていた。 そしてその二人だけは今もなお、何かを呟いている。 それ以外は、多少の違いはあるが、沈黙。 殆どが俯き、黙っていた。 「……」 それが、数分間続くと、何も言わず、クロスが立ち上がった。 「クロス……」 そのまま扉に向かって歩いていくクロスに、ルビーが立ち上がり、声を掛けた。 「何だ」 一旦足を止め、嫌々そうな表情で、振り返る。 「……俺を止めようとしているのなら、無駄だ。それに、それでは約束が違う。 邪魔はさせない。お前を斬ってでも、俺は行く」 「違う。そうじゃない」 クロスの推測に、ルビーは首を振る。 「私は……クロス、あなたが結局どうしたいのか聞きたい」 「……どういう意味だ」 「クロス、あなたは結局、お兄さんを殺したいの……?それとも、正したいの……? どっち……?」 「……答える必要はない」 そう言い切ると、クロスは扉に早足で歩く。 だが、その時。 コンコンコン……。 と、三回のノック音が響いた。 「あ……」 それに今まで黙っていたユリが反応した。 「……?」 「俺だ。話は終わったか?」 その声は、ゲームのもの。 「……あぁ、終わった」 そう言って、躊躇無く扉を開く。 そしてそのまま扉の前に居たゲームの脇をすり抜けようとした。 だが──。 「……何をする」 ゲームに肩を掴まれ、それはかなわなかった。 「止めると言うのなら、例え貴方でも……」 「まぁ、待て。お前に朗報だ」 その言葉に、クロスは虚を衝かれ、思わず懐に入れていた手をだらんとさせた。 「朗報……だと……?」 それは、無理もない事だろう。 クロスは十六年の人生の中で、真の意味での“朗報”という言葉を聞いた事が無い。 聞くのはいつも、キメラやホムンクルス関連の物ばかり……。 だから、虚を衝かされてしまった。 「あぁ、つい先刻、学院長がお戻りになられた」 「!!それは本当ですか!?」 ゲームの言葉にクロスではなく、ユリが過敏に反応する。 だが、肝心のクロスは訳が分からなかった。 「学院長……?」 思いあぐねてみるが、その名に心当たりが無かった。
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