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「そういえば、知美って髪綺麗だよね。」
知美は一瞬驚いた顔をして、すぐに赤面しながら言った。
「そうですかー?友達にも良く言われるんですよー」
「それに、髪型もすごく良いよ。」
調子に乗って僕は畳み掛ける。
「えー切ろうかなと思ってたんですけど、どうしようかなー」
笑いながら知美は頭をかく。
「どう?俺の事悪く感じた?」
しばらくの後、ニヤニヤ笑ってる僕の顔を見て、ようやく知美が気付く。
「あーーーひっどーーい!!今の嘘ですか!!?」
知美が赤い顔をして怒る。今日も忙しい顔だ。
「すごい大好きになりかけたのに、今ので最低ですっ!」
そんなに嘘と思った訳ではないが、昨日からの不躾な態度に対する報復措置だ。
「さて、姫を怒らせた所でこの辺にしようか」
僕にだって休日にやらなければいけない事はある。
「う~ん、彼女さんに悪いですもんね」
知美がまだ口を尖らせながら呟く。
彼女がいない事を伝えるべきか一瞬戸惑ったが、嘘をつく理由もない。
「彼女はいない。でも彼女がいなくても僕には洗濯や掃除がある。」
あはは、と知美が大きな声で笑って言う。
「それじゃ洗濯機さんや掃除機さんに悪いですもんね」
「で、今度はいつ会えます?」
とても当然のように言ってのける知美。
「そんな未来の事はわからないさ、と言いたいけど水曜は比較的仕事が定時に終わる。」
…自分でもなぜこうなったか分からない。
本当は適当に断るつもりで来たのだが、気がつけば次の約束をしてしまった。
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