101人が本棚に入れています
本棚に追加
/50ページ
水曜日いつもの店につくと、すでに知美は来ていた。
僕が窓の前を通ると窓の向こうから知美は元気に手を振る。僕は少し照れながら拳を向けた。
待ち合わせの時に手を振るのは女性の特性だ。
「今日は早かったね」
トレイを置きながら皮肉を込めて僕は言う。
「そんなことないですよ、コーチ」
皮肉には全く気付かずに知美は答えた。
「第一印象って、大切なんですか?」
サラダを食べ終わった知美がナプキンを口に当てながら唐突に尋ねた。
「うん、初頭効果って言って結構大切だよ。」
僕はテリヤキのハンバーガーに悪戦苦闘しながら答える。
いつも思うんだが、手や口を汚さずに食べるにはこのテリヤキは不便だ。
「う~ん、初めて会った時の私ってどうでした?」
眉を顰めながら小声で知美は僕に尋ねる。別にヒソヒソ話で話す事でもないのに。
「正直が良い?オブラートに包んだ方が良い?」
意地悪だなぁ、と自分で思いながらも僕は答える。
「コーチの意地悪…」
知美の拗ねた顔は面白い。ついつい意地悪をしたくなる僕は思ったよりも性格が悪いのかもしれない。
「人は無意識にね、最初に抱いたイメージを保とうとしちゃうんだ。」
僕は話を逸らした。
「そういうもんなんですか?」
最初のコメントを投稿しよう!