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カタカタカタ
アンドロイドは起動させるときに、必ずこんな音を出す。
それを聞くと、私はいつも不愉快になるの。
カタカタカタ
ピー
『初期起動完了致しました。製造番号2788ー6953448。製造所、南母親型アンドロイド第三製作所。
マスターのお名前を登録して下さい』
本当にただの機械だと、思い知らされるから。
オーダーメイドで造らせた、死んだお母さんと全く同じ顔のアンドロイド。
これが、29体目。
「アイリスよ」
『マスター、アイリス。私のお名前をどうぞ』
「メアリ、よ」
『製造番号2788ー6953448、メアリ。登録完了致しました。ご命令をどうぞ』
「私のお母さんになってちょうだい」
『畏まりました。マスター、アイリス』
アンドロイドは私に頭を下げる。
私の中のイライラは溜まるばかりだった。
西暦2887年。
世界中にアンドロイドが普及し、誰もが不自由なく暮らせる時代がやってきた。
環境汚染を最小限に抑えた技術の進歩が進み、地球の環境問題は少しずつ改善。
街は全て機械となり、誰もが幸せに暮らしていた。
私を、除いて。
私の母は、自殺した。
この世界は、便利なものが有りすぎて、人間は段々することがなくなってきた。
家事をしない専業主婦。
家事はアンドロイドの方が優れているので、母は何もすることがなく、精神的に不安定になり、自殺した。
この世界の死因は九割が自殺だったから、別に珍しくともなんともなかった。
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