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「……どうしよ」
自室の台所のある冷蔵庫に寄り掛かりながら、エルザはそう独り言を漏らした。
天井を見上げ、手にしてるワインボトルをそのままラッパ飲みする。
口端から紫の液が垂れ、首筋の所まで流れるが彼女は気づかない。
目はしっかりしている。
酔ってはいないようだ。
しかし、彼女のその瞳は、どこか虚しげだ。
ひと飲みするとゆっくりとしゃがみ込んで、膝を抱える。
そして、小さく溜め息を漏らした。
今の彼女は、酷く落ち込んでいた。
明かりもつけず、カーテンを閉めて薄暗くなった部屋の中には音も何も無い。
その中で、彼女は動かない。
―――ただの屍。
その言葉が、今の彼女にはお似合いだ。
と、その時玄関で扉が開く音が聞こえた。
玄関は台所のすぐ隣である。
足音は茫洋とした瞳を下に向けたままの彼女の隣で止まった。
「エルザ」
彼女は目を声の主に向けない。
膝を抱いたまま、じっとしている。
その人物は、今度は彼女の目の前に移動して同じようにしゃがんで目線を無理矢理合わした。
―――カレンだった。
「エルザ…」
彼女はもう一度そう言ってエルザに小さな声で問い掛けた。
「また……なのか?」
首を小さく頷かせて反応をする。
カレンはそんな彼女の頭を、そっと撫でてやった。
少しの間そうしていると、不意に彼女の身体が小さく震え始めた。
それと共に、鳴咽が―――泣いていた。
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