第壱話 雨降り小僧

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「今日で三日か」    俺は灰色の空を見上げ、溜息を吐いた。  三日前に降り出した雨は、その勢いを弱める事なく未だ降り続けている。   「梅雨時でもないのに」    傘を開き、再び溜息を吐く。  雨の影響で四月にしては肌寒く、吐いた息がほんのりと白い色を帯びる。  しかし湿度は高い為、俺の猫っ毛は好き勝手に向きたい方向を向いている。   「明日は止むかな」    天気予報では曇りだったが、昨日の予報では今日も曇りになっていた。  俺には明日はどうしても晴れて欲しい理由がある。  しかし天気ばかりは、俺がどうにか出来るものではない。    灰色の空は気持ちを憂鬱にさせるので、下を向いて歩く。  そして水溜りに出来る波紋が意外と綺麗だな、等と感心してしまった自分に肩を落とす。    その時ふいに、制服の胸ポケットに入れてある携帯が振動する。  長さからしてメールのようだ。  差出人に心当たりのある俺は、慌てて雨をしのげる場所を探した。    そして目に付いたのは、シャッターの閉まった駄菓子屋のアーケード。  学校から駅までの裏道にある小さな駄菓子屋だが、店主のお婆さんの気さくな性格と小さい割に豊富な品数、何よ気の店である。
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