939人が本棚に入れています
本棚に追加
/84ページ
「今日で三日か」
俺は灰色の空を見上げ、溜息を吐いた。
三日前に降り出した雨は、その勢いを弱める事なく未だ降り続けている。
「梅雨時でもないのに」
傘を開き、再び溜息を吐く。
雨の影響で四月にしては肌寒く、吐いた息がほんのりと白い色を帯びる。
しかし湿度は高い為、俺の猫っ毛は好き勝手に向きたい方向を向いている。
「明日は止むかな」
天気予報では曇りだったが、昨日の予報では今日も曇りになっていた。
俺には明日はどうしても晴れて欲しい理由がある。
しかし天気ばかりは、俺がどうにか出来るものではない。
灰色の空は気持ちを憂鬱にさせるので、下を向いて歩く。
そして水溜りに出来る波紋が意外と綺麗だな、等と感心してしまった自分に肩を落とす。
その時ふいに、制服の胸ポケットに入れてある携帯が振動する。
長さからしてメールのようだ。
差出人に心当たりのある俺は、慌てて雨をしのげる場所を探した。
そして目に付いたのは、シャッターの閉まった駄菓子屋のアーケード。
学校から駅までの裏道にある小さな駄菓子屋だが、店主のお婆さんの気さくな性格と小さい割に豊富な品数、何よ気の店である。
最初のコメントを投稿しよう!