クローム研究施設制圧

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トンネル内に響き渡る轟音と共に、目の前の普及型MT《ビショップ》が爆散した。 周囲には同じく破壊され、原型を留めぬMTの残骸が幾つも転がっている。全て俺ことレイヴン《ロズウェル》とAC《パイカル》により倒された、哀れな駒達だ。 俺は今依頼を受け、クロームの研究施設にアタックをかけているところだ。当然、馬鹿正直に真正面から突っ込むなどという、ドン・キホーテのような真似など出来ない。依頼主は比較的警備が薄いであろうトンネルからの侵入を提案したが、連中め……情報が筒抜けじゃないか……。 トンネル内にはさっきのビショップをはじめ、迎撃機銃に浮遊兵器(タンケッテ)、果てはクローム製AC《スパイトフル》までいやがった。まあ、所詮は企業の量産型だ。レイヴンの駆る純戦闘用ACに敵う訳がない。俺は大した損傷も出さずにトンネル内の標的を粗方片付け、研究施設に繋がっているであろう出口へと向かった。 分厚いシャッターを開け、薄暗いトンネルからようやく抜け出した俺の前に広がっていたのは、やたらだだっ広い空間と、砂漠みてえな肌色の大地だった。 「ここは…演習場か?」 俺は声に出して言った。何故ならここは、常識では考えられない異質な空間だったからだ。 考えてもみてくれ。スポーツの大会で使うようなドーム状の閉鎖空間に、砂漠としか思えない大量の砂が敷き詰められているんだ。御丁寧に砂丘まで作ってやがる。恐らくは、実戦を想定したテストなり演習なり訓練なりを行うんだろうが、わざわざ施設内に造る必要があるのか?地下世界とはいえ、十分なスペースが外にはあるだろうに……。 そんな事を設計者に小一時間程問い詰めたかったが、そんな余裕はたった今失われた。砂丘の向こうに、灰色の影が―流石に蜃気楼までは無かったが―見えた。 『敵ACを確認。《ブラストバレル》です。』 俺のACの頭部に内蔵された高性能コンピュータが、機械らしい無機質な音声で敵の正体を洗い出した。俺は、同時に表示された敵に関する情報に目を通す。レイヴンはランク153位の《ジェフィー》、ACは『武器腕』と呼ばれる腕部一体型のプラズマ・キャノンを装備した逆関節タイプだ。他にも小型ミサイルを装備しているが、恐らくコイツで牽制してからの特攻を得意戦術としているのだろう。 だが、下位らしくその他の装備は貧弱だ。ランクだけで勝敗が決まる訳では無いが、この戦い、貰った。
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