最終章。『回顧……そして、花は咲く !?』

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「どういう事ですか」 「実は、私が沼尻さんの家に泊まったあの日、沼尻さんは岩手の田辺夫妻の所に養子に入った憲治さんに一度も会いに行った事がない、年が明けたら一度会いに行こうかなと急に言い出したのです。それで、私もそれが良い、是非会いに行くべきだと勧めました」 「そうだったんですか……では、山井はその旅費を沼尻さんに貸す為にわざわざ猪苗代に出て来たと言うのですか」 「そうとしか……」 東郷はそう言って黙ってしまった。一方、それを聞いた卓司も腕組みをして黙る。 「…(果たして金を貸すだけの為にわざわざ猪苗代まで出て来るのだろうか)」 「……紺野さん、どうしました?」 黙って考え込んでいる卓司を梅沢が心配そうに覗き込む。 「いや、大した事では……それより話が逸れてしまいましたけど、それからどうしたんですか」 顔を上げた卓司は質問を続け、やや落ち着きの戻った東郷はまた話し出す。 「はい、一度その時計を見せて貰えないかと言ったのですが、今は、スイスにあるロレックス本社に修理に出してあるから手元にはないと言うのです」 卓司は頷くだけだが、先を続けてくれという意図は東郷に伝わったようではあった。 「じゃあ、いつならば良いのかと尋ねると、来月(12月)の20日には修理が終えて戻って来るはずだから、その日以降なら構わないと言うのです。ですが、私も年末は忙しくて無理でした。その事を伝えると、じゃ、来年にでもまた連絡をくれと言われて、その時はそれで終わりました」 「じゃあ、その時はまだ山井を殺そうとは思っていなかったのですね?」 「はい。山井に対する不信感と憎しみは増しましたが、さすがに殺そうと迄は……その後に守さんから本間の入れ墨の事を教えてもらいました。まさか、あの本間が、とは思いましたが、一応、確かめようと」 「変装してリカに行った?」 「はい、お恥ずかしい話ですが……」 「お気持ちは分かります。それで?」
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