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「ご存じの通り、あの時は入れ墨の事は確認できませんでしたが、どうしても2人の関係が気になって……それから、私なりに山井と本間の関係を調べたら、2人が深い関係にある事、本間の首の後ろににもどうやらそれらしき入れ墨がある事も分かりました。
あ~~っ、私の人生を掻き回した2人が偶然か必然かここにいる。この2人をどうすべきか、随分と悩みました。そして、その結論は山井が沼尻さんの家を別荘として使っていると知った時に出ました。死人に鞭打つとはこの事ではないのか、山井の強欲さには腹の底から怒りが込み上げて来ました。
私の中で何かが弾け、自分という人間を映し出していた理性の鏡は粉々に壊れ、山井は生きている価値のない人間、本間は私の希望を奪った許されざる人間だと判断し、私自身が2人に死刑の判決を下しました」
「それが動機でしたか……じゃ、その後に殺害計画を練ったんですね?」
「はい。大晦日にあの別荘で山井が本間と一緒に過ごす事を知り、チャンスはそこしかないだろうと思い、計画を立てました。幸い、沼尻さんの家の構造は分かっていましたし、あの裏山から立花の方へ出れる事は知ってましたから」
「それで、完全犯罪を計画した訳ですか」
「完全犯罪という大袈裟なものではないですが、ただ殺すのでは死んでいった人達へのレクイエムにもなりませんし、私にも家族や会社、守るべき物がありましたから……」
「で、立花を拠点に準備をした訳ですか」
「はい、立花には年内に4回程出掛けて、入念な下調べをしました。あの年は雪が少なく下調べも簡単でした」
「立花で偽名を使っていたのは素性を隠す為?」
「そうです」
「となると、やっぱり、ナナカマドの実は東郷さんが運んだ物かぁ」
卓司の独り言のようなセリフに東郷は疑惑に満ちた眼差しを向ける。
「ナナカマドの実? 何ですか、それは?」
「立花の裏にある木で、秋には真っ赤な実を付けるんです」
そう言って、卓司は2階の窓の所で見つけたナナカマドの実について話し出す。
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