夏の思い出

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「ったく、寝てたつうの」 三年幹部本城龍二。 深夜一時の呼び出し音は、自分を三年間振り回す最強の男。 「駅裏のカラオケ?」 俺は歌わねーぞとブツブツ悪態をつきながら本城はジーンズに脚を通す。 寝起きのせいで時折、よたよたしながらも準備をし部屋を出る。 駅裏の古びたカラオケやはドレミと書いてある看板が歪んでいた。 数ヶ月前までは確かやっていたような気がしていたが、今は廃墟と化していた。 (歌わねーとかじゃなくて歌えねーわな…こりゃ) 裏口が開いてるといわれ、回れば確かに簡単にドアは開いた。 本城だって鈍くはない。 こんな所に呼び出された理由は… 廊下だった場所に倒れる若い男たち4人のせいだろう。 一人は壁際にもたれ辛うじて座っている。 その真正面にしゃがんでいるのが、本城を呼び出した男、金子大地だ。 「例の虎柳の連中か…」 本城の爪先にぶつかったのは倒れている男の腕。 男がううっと呻き声を上げる。 「折れてんのか?ご愁傷様。」 当の呼び出した本人はまったくの無傷。最近、金子の喧嘩を拝んでなかった本城は惜しいことをしたなと思った。 彼の前に立つとは自殺願望者に等しい。 それ程、金子大地は強い。 「コイツ、八尾汰のスクラップ置き場て言ってんだよね、龍二くん」 「あー…あそこか…」 すくりと金子は立ち上がる。 「流石に4人も引き摺ってきたら疲れたぁね…」 肩をパキパキ鳴らす。 (4人引き摺ってか…) 外でのしたのをズルズル引き摺る金子の姿が本城の脳裏に浮かぶ。 まぁ有り得なくない。 「じやぁ、あれだな。辻だって腹立ってんだろーからヤツの番か」 携帯を本城が取り出せば、時刻は2時をとっくに過ぎていた。
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