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ただ俺には、それを伝えることができない。
言ってしまえば、何もかもが終わってしまうような気がした。
過去は消えない。
知ってしまった以上、俺はもうここにはいられない。
償わなければいけない。
「ごめんな……駄目だ」
「なんで、よ。ちょっと!どこにっ!?」
俺はなんだってこんなに弱いんだろう。
もう、逃げ出すしかできなかった。
掴まれた手を振りほどき、俺はそのまま外へ出る。
沙希は追い掛けて来ているんだろうか。
後ろを振り返っている余裕などなかった。
再び、あてもなく外を走り回る。
逃げるように、どこか誰もいない場所へ。
どこだっていい。
空は既に暗くなっていた。
じめじめと湿気の多い空気が肌に纏わり付く。
雨が降るんだろうか。
傘は……持ってない。
それでも引き返す気は全くなかった。
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