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王様は別の部屋に移動しちゃったかな。そう思いながら先ほどの部屋を一応見てみると、王様だけがそこに残っていた。
「他の重役さん達はどこいったんです?」
飲んでいた酒は二杯目らしい。空のボトルが一本テーブルの上に、もう一本は王が持っていた。っつかまだ飲んでるよ……。
「今日は一段と月が輝いておるな」
窓から上空を見上げて王が言う。俺の質問の答え……ではないだろうな。最初は何の事だかわからない内容だったが、確かに月はこれ以上ないと言ったくらい丸く、雲で隠れてさえもいない。
「そう、ですね」
相槌はうっておく。
「ところで――月光の当たるところでしか咲かない花を、イシュカ君は知っているかね?エルナ・ルナと呼ばれる小さな花じゃよ。こういう日に花びらを精一杯に広げて月光を反射し青白く光る」
エルナ・ルナ……聞いたことないな。
「いいえ、知らないですねぇ。この季節に咲く花なんですか?」
「いいや、季節は今ではないし、この辺りの地方には咲かない花じゃよ」
「……そうですか」
えっ、じゃあ何で今話に出して来たんだ!?誰だってそう思うことを俺が聞こうとした時、
「別にこの話に意味はないのじゃがな、ハハハ」
……そっすか。意味ねーのかよ。考えるだけ空しくなりましたよ。
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