「笑顔の日もある」

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  はぁ。 煉骨は居間でひとり、頭を悩ましていた。 昨日、祭の寄付という予定外の出費(千円)があった為、今月の食費を更にやり繰りしなくてはならなくなったのだ。 出来る工夫は殆どしている。 (気付かれん程度から量を減らしていくか…) 色々に頭をめぐらせていた時。 インターホンが鳴った。 (もぅ支払いの用はうんざりだぜ) 仏頂面で応対した。   昨日の自治会副会長だという老人だった。 「何でしょう?」 煉骨がきわめて慇懃に訊くと、副会長はにこにこと広告のチラシで包んだ包みを差し出した。 「うちの婆さんが作りすぎましてな。皆さんで召し上がって下さい」 若い女の子は甘いものお好きでしょう、などと言う。 「それはどうも」 持った感じがずしり、とくる。どうやら餅のようだ。 「奥様に有難うございますとお伝え下さい」   どうも蛇骨はあの懐っこい顔立ちと幼い態度からこういうプレゼント運を呼び込むらしい。 煉骨は少々複雑な思いで食器棚に包みを仕舞いこんだ。 珍しく数も当たらずに。   中を確認したのは夕食後だった。 取り出して、しまったと小さく舌打ちした。 耳聡い蛇骨が煉骨の手元を覗く。 「5個しかねぇじゃん」 そう、二つ足りない。 (しょうがねぇ…おれと睡骨は年長だからな…) 「…蛇骨、おまえらで分け」 分けて食えと蛇骨に渡し、そして睡骨を呼ぼうとした、その時。 蛇骨が一つ取り、ててっとテーブルへ走った。   「大兄貴っはい、おれと半分こな😃」 「へぇ桜餅か。旨そうじゃねぇか」   蛇骨の行動にあっけに取られている煉骨の横から、半分に割られた桜餅が現れた。 睡骨が差し出していた。 「あいつ、兄貴が道明寺粉の桜餅好きなの知ってるからな」 「…明日は雨が降るぜ」   煉骨は俯くと、桜餅をかじった。
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