序章

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桜は、その下に埋められた死体の血を吸って淡い花を咲かせるのだと、人間が言っていた。 「……人って侮れない」 樹齢一千年以上は経っているであろう巨木は、淡い色を枝に乗せてさやさやと揺れる。 簡単に折れそうな細い枝に腰掛けた男は、その花と同じ色をした髪をさやさやと風になびかせて、ふわりと微笑んだ。 「あぁ、太鼓だ…」 トン、トン、トトン。 少し離れた所から軽快な音が響く。 トン、トントト、トン。 「懐かしいなぁ…」 目を閉じた奥で、あの人が踊る。 太鼓の音に合わせて、楽しそうに微笑んだ。 「楽しかったねぇ、………ひより」
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