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自分で仕込んでおいたというのに、すっかり忘れてしまっていた。
本当に今日の俺は、どれだけ緊張していたのだろう。
いっぱいいっぱいだった自分がおかしくて、少し笑えた。
「あの部屋。お前にやるよ」
右手の人差し指を、天井に向ける。
宮下の顔も同じように上を向いた。
「いてもいいの?」
驚きすぎたのか、抑揚のない声で聞かれる。
手にしていたチーズを置いて、きちんと宮下に向き直った。
「持ってくるか? 荷物」
もともと空いていた部屋だった。
宮下の着替えが、少しずつ増えていくのがうれしかった。
一緒に住もうだなんて。
照れくさくて言えないから。
これが俺の精一杯。
それでも宮下にはちゃんと伝わったようで。
「うん」
満面の笑みでうなずかれた。
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