前門の虎、後門の狼

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「いや、実はここに来る前に買ったんだよね二つ」 赤のお揃いのフルフェイスのヘルメット。フルフェイスって高いんじゃないか? 「誠を乗せるのに、ノーヘルでサツに目を付けられる訳にはいかないだろ?まあ、捕まらない自信ならあるけどね」 「静香姉……」 なんていい人だ。思わず抱き着きたくなる。 またもや静香姉にしては驚愕発言だったようで辺りがざわざわと騒がしくなり始めた。 「……マジか!」 「何者あいつ……あんな静香さん初めて見たわよ!?」 「やべぇ……まさか総長が認めた男なのかも知れねぇな」 「まさか副総長候補!?誠さんとか兄貴とか呼んどいた方がいいのか?」 副総長!?待って下さい!どっからそんな妄想が!? 「誠。急ぐんだろ?」 静香姉のその一言で急いでいるのを思い出した。 「え……ああ、うん」 そう言って後ろに跨がる。静香姉はクラッチを握りながらハンドルを回す。激しいエンジン音。 「誠ちゃんバイクは初めてかい?」 「うん」 バイクなんて乗る機会ないしな。 「じゃあ、曲がる時は曲がる方向に向けて体倒してね」 それは誰かに聞いた事あったような気がする。二人して反対側に倒れたら曲がれないから。
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