前門の虎、後門の狼

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「分かった」 「後腰辺りを掴…………いや!がっちりと私に密着して抱き着くのがマナーだよ」 「へぇ、分かった」 知らなかったな。がっちりくっついた方が動き合わせやすいのか? 言われた通りに静香姉の背中から腕を回し、ピッタリとくっつく。 筋肉質なのかと思って硬い感触をイメージしてたのに柔らかくて驚く。 …………不謹慎にもちょっとドキドキしてきた。 「おいおい……静香さん嘘教えてやがるぜ?」 は? 「がっちりくっつかれちゃあ、運転しにくい筈なのに……」 え……そうなのか?てかさっきから静香姉は皆の声聞こえてないのか? 「そんなに抱き着かれたいのか……!?」 え…… 「ちくしょう!静香さんのあんな生き生きしたいい顔久々に見たぜ!」 ……ちょっ……俺どうしたらいいんだ。 なんか静香姉は鼻歌うたいながら上機嫌で、周りは全然見えてないみたいだし。 「「「姉貴に兄貴!行ってらっしゃいませ!!」」」 いやああああああ!! 兄貴って誰ですか!? 皆さんが頭を下げながらお見送りをしてくれるんですけど!? 「おう!」 「待って下さい!そのよく分からない勘違いは止めて下さい!本気で!!」 そんな言葉も虚しく掻き消しバイクは走り出して行った。
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