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春風 向。
それが俺の名前だった。
だが今は違う。
つい最近まで俺は裕福な家庭の下ぬくぬくと育っていた。 何の迷いも悩みも惑いも…憂いも無く。
たった独り生きていた。
よく金持ちの家に生まれて奴は何でも買って貰えるってのがあるが、俺は正にその通りだった。
金だけ渡され何でも買い放題だった。
服、アクセサリー、ペット、ゲーム、家、車、酒、タバコ。
文字通り何でもだ。
もちろん俺は未成年。
だが何でもやって良かった。何でもやらせて貰えた。
いや、やらされてた。
物を与えるだけ与え、俺を無視し続けた。
関わらなかった。
見なかった。
話さなかった。
触らなかった。
俺は一般の人では想像出来ないほど沢山の物を持ってた。
だが、そのかわり一般の人が持っていた物を持っていなかった。
それは愛。
それは夢。
それは友。
それは道。
それは…温もり。
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