1.安らぎの中に残るもの

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「すごいな、今年も……」  その称賛の言葉が何を指しているか、それは分かる。  俺はゆっくりと目を開き、置いてある大量の花束に目を向けた。 「うん。  皆、エルとアリーナさんの事……好きだから」  きっと、それだけではないだろうけど。  贖罪の気持ちもたぶんある。  それでも、その気持ちだけではない。 「……そうだな」  短く返し、ヴァルスは優しく笑った。 「んじゃ、そろそろ行くか」  明るい口調でヴァルスはそう言い、立ち上がる。  そして俺に笑いかける。 「うん……。  そうだね、行こう。  テミルさんの所に……」  墓石を見つめたまま、俺はそう返した。 -+-  砂利を鳴らしながら、ならされた地面を歩く。  見えてきた、目的地のレンガ造りの家を見上げる。    日当たりがいい場所にあるその家は、今日も陽に明るく照らされている。  二階の窓にも陽は当たり、俺の目に強い光を映した。  俺はその光を避けるように視線を地面へと逸らす。  しかし逸らしても、陽は俺を照らし続けた。
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