プロローグ

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しとしとと静かに降る雨は、未だにその足を緩めることはない。 いや、違うか。 先程に比べれば、かなり弱くなっている。 そんな中、黒いコートに身を包んだ男は雨を避けるようにフードを被り直す。 そして内ポケットから二つ折りの携帯電話を取り出した。 邪魔な黒い手袋を口にくわえて外すと、迷わず履歴から1つの番号を呼び出し、これまた迷わず通話ボタンを押した。 耳に携帯をあてれば、最近でてきた新人アーティストの曲が流れてくる。 数日前に待ちうたを変えたくせに、また新しい曲にしてやがる。 なんとも、はいからさんなもんだ。 そう心の中でぼやいていると、ようやく繋がったのか待ちうたが止まる。 『はいはぁ~い。どぉしましたぁ~?』 「俺です。仕事、終わりましたよ?」 『いやぁ~さすがだねぇ~。 やっぱり仕事早いなぁ~。』 電話の声の主の声量がでかいのか、はたまたこの間の抜けた声に苛立っているのか、男は面倒くさそうに耳から携帯を少し離した。 .
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