文化祭、日常の変貌

16/67
119124人が本棚に入れています
本棚に追加
/570ページ
「今君が投げ捨てたお好み焼きは、そこで作っている彼女が一生懸命作ったものなんだぞ?誰かに食べてもらおうと、喜んでもらおうと、文化祭の時間を削ってまで頑張って作ったものだ」 「あ?」 神流木美鈴の言葉を聞き、不良Aは俺の胸ぐらから手を離した。依然として神流木美鈴に腕を掴まれているが、標的は完全に俺ではなくなっていた。 「私にだけ迷惑をかけるなら別に構わない。でも、彼らに八つ当たりするのは間違ってるだろう?」 神流木美鈴はそう言いながら俺や店番のクラスメイトに手のひらを向けてきた。 正義感というのだろうか。それとも類い希なるリーダーシップからくるのか、彼女はとても輝いて見えた。 「うるせぇんだよ!大体、てめぇは二年だろうが!副会長だか何だか知らねぇけどよ、ちょっと生意気すぎんじゃねぇのか?」 だが、そんな光も不良たちには届かなかったみたいだ。 先ほどからずっと均衡状態が保たれているが、俺はどうするべきなのだろうか。 先生を呼ぶって選択肢もあるが、ここを離れたらマズい気もする。 進藤にアイコンタクトを送ってみるが、オロオロしてるばかりで全く役に立たない。 「と、とにかくここで争ったらみんなに迷惑がかかりますから……」 「てめぇも一々うるせぇんだよっ!!」 不良Aの空いた左手が俺の方に近付いてきた。 殴られる。 そう思った瞬間、俺は信じられないものを見た。
/570ページ

最初のコメントを投稿しよう!