俺が言うの?(完結)

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「授業始めるぞー」  六時間目がいつも通り始まった。特に変わったことはなく、いつもより暖かい日差しが教室内を満たしていた。なんとも平和な時間だ。  ただ、今から始まる日本史に問題がある。担当の先生は俺の担任である、でっぷりと太った、飯田(いいだ)先生。通称アブラゴン。  いつも、俺に仕事を押し付け、自分は高みの見物。することなすこと、全てにけちをつけるし、生徒に昼食をおごらせようとする。この学校で一番キライな先生、ナンバーワンだ。 「お、今日は全員いるな。よし、さっさと授業進めるか。あ、委員長、ついでに窓を開けてくれ。俺はそこまで動きたくないからな」  そんな、俺にとってワーストな先生がおかしい。  まず服装。そこはまあ、いつもどおり。さらにいいことでもあったのか、鼻歌まじりに出欠を取っている。正直、おっさんが鼻歌してもキモイ。  さて、何処がおかしいのか。 ほら、アレだ、アレ。老いてきた男性が気にすること。俺の親父も最近ほしがっているアレ。  とにかくアレが本来あるべき場所からずれていて、海草のお化けに見える。それはクラスの半数以上を、笑いに突き落とそうとする爆弾だった。  さて、どうするよ、この状況。  このまま行けば、間違いなく今日の授業は頭のなかに入らない。テストまで残り三日。ただでさえ、遅れている授業が遅れるなんてことは避けたい。  俺が葛藤している間にも先生はプリントを配り、前回使用したプリントの答えを黒板に並べていく。 「なあ、ずれてるよな」  唐突に、後ろの香椎(かしい)が背中をつついてきて、そう囁く。  やっぱり話は先生のアレ。人工的に作られたアレ。 「うん。ずれてる」 「先生に教えてやれば? 委員長さん」  香椎は茶化すようにしてそう返した。 「先生がさ、クラス全員に禿だってばれた瞬間の顔、俺、すっごく見たいなぁ」  お前は女に甘えるホストか。  そう心の中だけで突っ込んで、俺はため息をついた。  すでにクラスメイトの半分は黒板、いや、先生のことを見られずにいる。俯いて必死に笑いを堪えていた。しかし、堪えきれずに肩が震えている。  この状況、テスト前にしてはやばい。非常に危機的状況。どこかのコマーシャルのように、どうすればいいか、カードから選択できないだろうか。
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