第1章 プロローグ

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ふと、光を感じて目を開けると、見慣れた天井が見えた。 左を向くと、窓辺に置かれた小さな観賞植物や小物たち。 右側にはノートパソコンが置かれた机。 その横の壁には北アルプスの風景写真。 ぽつんと置かれた白いテーブル。 私の部屋だった。 「夢か……」 あまりにもリアルな夢。 「やだな……」 腕を額にのせると、ため息をついた。 少し反動を付けてベッドから脚を下ろすと、しばらく両手で顔を覆っていた。 外から鳥の鳴き声が聞こえた。 私はその鳴き声に誘われるようにゆっくりと立ち上がると、窓の外を見た。 レースのカーテンの向こうで鳥が手摺りから飛び立つのが見えた。 「ごめん」 私はそう呟くと、ゆっくりと後ろの壁の鏡を見た。 顔色は良くないが、肌の調子はいいようだ。 起き抜けはあんな夢を見たが、たっぷり寝ていたということだろう。 時計を見ると、いつも起きる時間だった。 仕方がない。 とりあえず会社へ行くことにした。 いつものように身支度をして、いつものように着替えて、いつものようにバス停に向かった。 最近、私は会社に行くのが嫌になっていた。 ヒステリックに怒鳴り散らすだけの上司。 他人を出し抜こうとする同僚。 仲の良い真奈美も、同じフロアで顔が見えるとはいえ、別の編集部に移ったから私をかばえなくなった。 元々やりたかった仕事じゃない。 そろそろ限界を感じて、うつ気味になっていた。 だから、本当は会社に行きたくない…… そんな気持ちが、あんな夢を見せたのだろう……  
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