失踪症候群

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 人の心ってのは以外にも簡単に変わってしまうものらしく、今ハルヒが取っている俺の手は半時ほど前からそのままだ。   「いやはや。お似合いですよ」    というのは、一週間ぶりに行われた市内散策の集合時間にはさわやかすぎるスマイルを持つ古泉の台詞だが、内心の俺はといえば、黙れマガレーレ。などと毒づいていた。    それよりも、どうしてこうもハルヒが心変わりしちまったのかが俺には未だに解らなかった。    いつだったかHR前に話した時は、恋愛感情なんてのは一時の気の迷いだと豪語していた女が、なぜ俺などという宇宙人的未来人的超能力的要素のない一般人の手を取っているのだろうか。    事の発端は今から一週間前にさかのぼる。その日、久々に行われた市内散策の日、たまたまハルヒとペアになったのが始まりだったように思う。    不思議探しに精を出さなきゃならないかと思いながらハルヒについて歩く事数分。一年近く前、朝比奈さんから未来人的な話を聞いた辺りにたどり着いた。    突然立ち止まったハルヒを追い越した俺は、振り返った直後目の前にあったのがハルヒの顔だった事に驚き、次に口が開かない事に気がついた。    俺の口を塞いでいるものが、ハルヒの唇だと気がついた時にはまた悪巧みか何かかと思ったが、ハルヒが顔を真っ赤にして胸の内を語りだした時には、俺も本気にならざるを得なかった。    だが、一週間もすればそれが当たり前になるのか市内散策時に行っていたくじ引きは半ば必然的になくなり、俺とハルヒが組む形になった。つーかハルヒがそうした。   「キョンはここ!ここに座りなさい!」    喫茶店でそう言うハルヒは、おそらく俺の隣に座りたいのだろう事を俺は理解していた。
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