19―死神英雄―

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「…お前、いい度胸しているな。  お前たちを見つけて、様子を見ていたら…。  おい、聞いているのか?あ?  お前みたいな奴には無理だよ。  ボロを出すのがちょっと早いんじゃねーか。」 そしてもう一発銃声が響く。 賢二は身体をビクンと震わせ、動かなくなった。 手がまだカタカタと痙攣していたが、すぐに治まるだろう。     「笹本」 奈々子はもう動けないでいた。 三発聞こえた銃声で、きっと流星は賢二をしとめたのだろう。 …次は自分なのだ。   「…ふぅ。仕方のない奴だ。  行くぞ、早く」 流星はショットガンをデイパックへと押し込み、 奈々子の手を引いて立たせた。 奈々子は目を丸くして流星を見る。 そして慌てたようにして手を振り払った。 「離して!!!!!」 きっと下を向くと、賢二の死体が目に入る。 だから流星の目を見たままそう言った。 流星は何故か悲しそうに笑った後、奈々子の腕を乱暴に掴んだ。   「来い、一緒に。  このままここに残るって言うなら、お前にも死んでもらうぞ?」   そして、顔を歪めてそう言い放つ。 奈々子はハッと息を呑んで何も言えなくなってしまった。 奈々子が黙り込んだのを、流星はOKだと解釈したのか、 ショットガンを右手で持つと左手で奈々子をの手を引く。 奈々子はただただ怯えながら着いていくしかなかった。 ヒーローだと思い込んだ男は、今はもう死神にしか見えなかった…     男子16番 村井 賢二…死亡   【残り26人】
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