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*水面揺れれば*
2004年8月13日。
その日は空にも負けないくらい。海は透き通る青だった。
有名な場所ではなかったけれど、浜辺には沢山の人。
そこはとても賑やかでみんな楽しんでいた。
「お母さん!もっと速くぅ」
「もう無理…只でさえあんた重いんだから」
少女は小学四年生。
少女はこの学年になったが泳げない。
要するに「カナヅチ」だ。
だから、今年も母親に浮き輪を引っ張らせている。
その日は一日中苦しいくらいに快晴の予報。
だったはずなのに。
事は起きてしまった。
突然辺りは暗くなり、雷雨。
海は荒れて強い波が二人を襲う。
こんな荒れ狂った海に、誰が人が居ると思うだろうか。
母親は必死になり、泳げぬ我が子を抱き荒波に立ち向かう。
少女たちは気づかぬ間にかなり沖へと来てしまっていたのだ。
そして流されるまま、どれだけの時間が経ったのだろう。
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