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朝日-
蒼厳の古竜、アクオロドスはゆっくり片目を開けた。
昨晩、妖精が騒ぎ疲れて自らの上で寝てしまったため、ルムガルドの畔で一夜を過ごすはめになってしまった。
昨日は月の女神が湖(ルムガルドはジ・オードの古代林にある湖の一つだ)に帰って来るとの事で、森には静かな騒めきが立ちこめていた。
夕刻、女神が到着すると森中がお祭騒ぎと化し、そのまま皆疲れるまで月の女神の帰還を喜んだのだ。
俺も森の主として、出迎えねばならず、しぶしぶ出てきたが、騒ぎに巻き込まれたのもそのせいだ。
だが、木々の奴らまで騒いだんだから、本当に、森中だったのだと思う。
大半の者は住みかへ帰ったようで、湖の周りには自分達ぐらいしかいない。そもそも、一番騒いだのが妖精達なのでしかたがないだろう。
あくまで騒いだのも自分の上で寝たのも、妖精たちの所業だ。断じて私は被害者なのだ。
「おはようございます。アクオロドス様。」
柔らかな声が頭上から響いた。
フワリ、と地面に舞い降り夜明けの朝日を見つめる。どうやら妖精たちに便乗していたらしい。月の女神ともあろう者が!
心の中で苦笑したつもりが、つい口元が吊り上がってしまったらしい。僅かな笑いに月の女神は反応し、穏やかな笑みを浮かべる。
「何を笑っていらっしゃるのですか?」
振り返りながら蜂蜜色(パーニャ)の髪が風に広がるように流れ、煌めく。
長い睫毛にパッチリとした目、優しげな目元と笑窪。全てを暖かく包んでくれるとともに全てに魅了される笑顔を持ち合わせている。
思わず溜息をつくのも納得できる。ホッとするのだ。
あまりの美しさに魅了されつつ。
ホッとしたのも束の間、女神が透き通るような銀の瞳に心配の色を宿らせて尋ねてきた。
「アクオロドス様?」
吊り上がっていた口からさらに笑いがもれてしまう。そんなに心配そうな顔をされても心が暖まる。
不謹慎だな。
妖精たちがモゾモゾと動き始めようとしている。ノームたちよりも噂好きでお節介なな奴等が起きる前に決着をつけよう。
「なんでもない。ただ、お前がこ奴等と共に寝ていたかと思うとな。
ルナシアス。」
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