第一章・破滅の人形

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第一章・破滅の人形

「はぁ、はぁ、はぁ」  森の中を一匹のオーガが走り抜けていく。身長は3mを超し。腕だけでも成人男子の胴以上の太さはある。そして、その巨体からは考えられないほど素早く。必死で何かから逃げている。 (あれは、化け物だ)  つい、十分ほどまではオーガの仲間は他に三人いた。何時もどおり。人間の村を襲い。家畜を喰い。食料をあさって。気に入らない人間を殺そうとしいていた時だ。目の前に一人の人間の男が現れた。顔以外の全身黒い帯で巻かれた男だ。見たところ武器も何も持ってない。 「邪魔だ人間」  オーガがそう脅しが結果は変わらないんだから死んでくれだとよ」  オーガは笑い飛ばした後。持っていた棍棒を大きく担いで。そして一気に振り下ろした。 「舐めるじゃねぇ。人間が」  勢いよく振り下ろした棍棒は確実に男を潰した。少なくてもオーガ達はそう確信していた。しかし、振り下ろした場所には肉片すら残っていなく。いつのまにかオーガ の首を絞めていた。 「ほら、結果は変わらないって言っただろう?」  そして、そのままオーガの首をへし折る。オーガの骨格は人間のそれとは比べものにならないほど頑丈だ。それを簡単におることは現実的にあり得ないはずが、男は簡単にへし折ったのだ。 「残り三匹か。自殺を勧めても無駄そうだし。面倒だから・・・さっさと殺す」  そう、男が言うと数mの距離を僅か一歩でトロルの懐に潜り込む。そして、胸へ掌打の一撃。分厚い筋肉で覆われているのに、まるで背後から攻撃がされたがごとく。心臓を通して衝撃が背中に伝わる。  ようやく、オーガたちは悟った。この男は自分たちよりも格段い強いと。二匹のオーガは二手に分かれて逃げ出した。  逃げ出して一分もしないうちに一匹のオーガの断末魔が響き渡る。オーガは自分が一匹になったことを確信してさらに速度を上げた。  逃げ切れる保障はあった。ここはオーガの庭みたいなものだ。何も知らない人間とは土地勘が違う。隠れる場所は五万とある。そのなかでいくら図体のでかいオーガでも探し出すことは不可能に近い。  しかし、前方から黒い帯がオーガの四肢を縛り上げた。必死にもがいて逃げようとするが、逃げるどころか手に力すら入らない。力がどんどん無くなっていくのだ。 「やっと来たか」  男はまるで待ち構えていたかのように前に立つ。 「暴れても無駄だ。これは全ての力を封印する封具の一種だ」
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