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次の日、登校してみると佐渡の姿はなかった。学校には風邪だと連絡があったらしいが、金泉の話では全身筋肉痛と腰痛、そしてあらぬところの鈍痛により立ち上がれない状態だという。金泉を見る目が変わったのは余談だ。
放課後に薬局に立ち寄ってから見舞いに行こうかと相談してみたら、金泉はすごく言い笑顔で断った。佐渡もそんな見舞い品持参で来られたら顔を合わせられないだろうとまで言われれば、俺は引き下がるほかない。
考えてみれば、彼氏との情事でへろへろの状態を知人友人に心配されるというのは憤死ものだろう。俺なら自決する。
そんなこんなで艶々した金泉はその日一日ご機嫌で、対する俺は彼のテンションに振り回されてやたらと疲弊した。
そして佐渡の顔を見ないまま週明けを迎え、訪れた試験日。三日にかけて行われるそれをなんとかやりすごし、俺は駅前のカフェで力尽きていた。
「お疲れだね、ヒーローくん。いやあ、結果が楽しみだね~」
「ふざけるな……」
脳天気な金泉に辛辣な言葉を返したのは、アイスティーをちびちび飲んでいた佐渡だった。
「おまえの所為で僕の試験結果まで危機に晒されているんだぞ」
「えー? ごめんね?」
てへっと反省の色を見せない金泉の態度に苛ついているのは、なにも佐渡だけではない。
「このくそ野郎……せっかくカイトに頭下げてまで勉強見てもらったのに、無駄になったら痛い目見せてやるからな」
ここ数日、佐渡と身も心も繋がることのできた喜びから場所も選ばず金泉が惚気まくるので、ただでさえ集中力を乱し気味だった俺は、まったく試験に身が入らなかったのだ。
それにプラスして、またカイトが顔を見せなくなったことが引っかかっている。
「痛い目ってどんなの? ヒーローくんお腹すいてるからイライラしてるんだよ。この鴨肉とオレンジソースのサンド食べていいよ」
金泉がサンドイッチが盛りつけられたプレートを差し出してきた。
小洒落たもん食いやがって……もちろん俺は遠慮なく頂く。
金泉は佐渡にもメニューを差し出し、なにか食べろと勧めている。罪滅ぼしのつもりだろうか?
佐渡がお高いケーキセットを注文するので、便乗してパフェも追加しておいた。
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