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日の充たるサンコート。彩りの花々に囲まれ、その中を走り回る………狸。
「ほほほほ~。捕まえてごらーん。」
「待てっっ!!この化け狸っっっ!!!それ以上余計な事を喋らないように、干物にでもして差し上げますよっっ!!」
「馬鹿じゃのう。殺気を撒き散らした奴の言う事なんぞ聞けるか。ほれほれ。」
狸がくるりと向きをかえ飛び上がると、宗の頭に乗った。
「ふーむ。矢張り煉と小僧の頭が一番じゃな。坊の頭が今一じゃ。」
「~~~~っっ。」
宗が肩を震わせて怒りを堪える。
「………何か宗の人格、崩壊してないか?」
今迄は、俺と狸には礼儀を持って接していた筈だ。今の宗はどちらかと言うと、狸を天敵扱いしてる。
「あれ?薬嗣知らなかった?宗って、天狗様の事は尊敬しているけど、どちらかというと、敵扱いしてるよ?原因は薬嗣なんだけどねぇ。」
煉は狸を追い掛ける宗が余程可笑しいのか、クスクスと声を上げて笑ってる。
「俺?」
「………薬嗣は師匠と仲が良いからな。嫉妬だろ。」
珍しい。桔梗君も笑ってら。まあ、確かに可笑しいし、今の宗は年相応に見える。でも、あの冷静な秘書は何処へ?
「薬嗣も宗も今迄記憶が封じられていたからね。記憶が元に戻って、元々の宗の姿に戻ったんだろーさ。しかしまあ。本当、天狗様には自分を隠さないよな~。」
「隠せないの間違いだろ。………あれも一つの力だ。隠されたモノを捜し出すのが得意だからな。師匠は。」
「そうですねぇ……。」
何となく二人の間に剣呑な雰囲気が漂う。
「良いんじゃねえの?腹に一物隠している奴が悪い。俺は狸好きだぜ?なあ薬嗣!」
「ああ。お前等の場合、腹黒いからじゃねえの?俺も狸好きだぞ。」
俺とみかんが、狸を誉め讃えると、宗は益々面白く無かったようだ。
「老師……私と教授の幸せの為に置物にでもなってください。」
「なんでお前さん等の幸せの為に置物にならんといかんのじゃ?人様の事より、少し男を磨け。………のっっ?!」
ビシッ!と空気の震える音がして、狸は飛んできた縄に捕らえられる。
「………宗。今だ……殺(や)れ。」
横を見るとこちらも、みかんが狸好き発言が、面白く無いかったのか桔梗君が縄の端を掴んでいた。
「御協力、感謝致します。」
「お主等!卑怯じゃぞっ!」
今、狸VS桔梗+宗のゴングが鳴った。
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