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「………あると言えばあるし、無いと言えば無い。」
みかんは目線を合わせずに答える。
「酷い事務長だよなー。みかんちゃんだって協力してよ。」
「お前の遺産、半分寄付してくれるなら。」
キラキラな笑顔で答えるみかん。…………事務長を頼んだのは間違いだったかも。この分で行くと、これから容赦無く働かせられそうだ。
「高いバイト料だね………。みかんちゃんの手作りお菓子、何かある?」
「ああ。クッキーなら。」
懐から透明な袋に入ったクッキーを取り出すと、煉に渡した。
「言っといてなんだけど、何故に懐に持ってるの?」
「奴に襲われそうになった時に、これで気を逸らすためだ!」
「桔梗様は犬か何かですかい。まあ、良いか。」
煉は袋から取出したクッキーを床に一列並べる。
「何してんの?」
「ん?撒き餌。」
撒き餌って………これで桔梗君が釣れるとでも……。
ポリッ。
何かを噛る音がして、そちらを見ると、桔梗君が床のクッキーを拾って食べていた。
…………釣れてるよっっ!
俺は流石に驚いて桔梗君を止めようとしたら、その前に、みかんが飛び出した。
「この馬鹿たれっっ!あれほど拾い喰いするなと言ったのに、何、食ってんだっっっ!!!」
「………拾って無い。これは煉が床に置いたんだ。」
「だからって、喰う奴があるかっっ!!おあずけっっ!!」
みかんにクッキーを取られると、桔梗君は悲しそうな瞳で床のクッキーを眺める。
「桔梗様~。駄目ですよー。ほーら。こちらに綺麗なみかんちゃん特製クッキーがありますよー。」
桔梗君はクッキーを見て、煉にふらふらと近づき、袋を貰い、ポリポリとクッキーを食べはじめる。
「ほら。取り敢えず戦いは終わった。」
煉の見つめる方向を見ると、狸が宗を下敷きにして、勝利(?)のポーズをとっていた。
「ふっ。桔梗さえ居らなんだ、坊なんぞ敵では無い。しっかり精進せいっ!」
「~~~っっ。」
確かに狸の勝利だが、これだけ滅茶苦茶に破壊して、黙っている訳がない。………この神殿の持ち主の神官長が。
俺の予想は当たっていて、この後、狸・宗・桔梗君は、大きなコブを頭に作る事となった。
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