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1・彼の名はヤマト
何故、僕はこんな恰好で逃げる様に歩いているのだろう。
それもこんな恥ずかしい姿で…。
先生の教えを破って、力をコントロールする為の修行を怠ったからか?
それとも、先生に頼まれたメイド喫茶を探さないでいた天罰だろうか?
背後を付けて来る、妖気に苛立ちながらも僕は頭に引掛かった白い物をいじくる。
それにしても、何か僕が悪い事したのかよ。そりゃ、確かにカードバイザーをしたりして修行を怠ったのは認めるけどさ。
ちなみにカードバイザーってのは、この時代で一番リアルなキャラ召喚タイプのアーケードゲームだ。
…いや、それでも何故このタイミングなんだよ!頭に隠れていたはずのミミを出たのを確認した僕は、僕を追込んだと勘違いしたままの妖魔と対峙した。
勿論、この上無い恥かしいメイド服という姿で。
「ちっ、仕方ないなぁ。さっさとかたずけるか…封印解除アウ゛ァランチアクロイツ!」
僕は頭に付けていたヘッドドレスを外すと、本来の姿を取り戻した。
残念なのは幼馴染みのハルナに騙されて某メイド喫茶店のメイド服を着ている事だけ。
頭の中で詠唱が終わり僕と妖魔以外の回りの時間が止まる、次の瞬間僕らはパノラマワールドに戦いの舞台を移している。
「さぁ、行くよ!」
僕は先生に貰ったチョカーに手をかけた。
革製の首輪の先端に付いたそのクロスは見た目はただのアクセサリーだけど、そこには封印された神剣・猛がある。
「ほぅ…」
目の前のヘビメタ男の目付が変わった、やはり妖魔だ。
実態化した白銀の刃と紅の柄が僕の手に現れたのを見て、相手の妖気が高くなる。
「その刀、やはりお前が伯爵の使い魔か…」男は未だに現世の姿で笑ったままだ、多分僕のことをめぶみしてるのだろうけど。
「しかし伯爵が変わり者だとは聴いていたが、自分の使い魔に女装をさせる趣味があるとはな。」
そこは違う!
というか、先生は一体どんな風に言われてるんだろ?さすがに僕も心配になって来た。
「何か僕に様かい?君みたいな下等な妖魔をご主人様なんて呼んだ覚えはないけど…」
猛が早く血を吸いたがってるのを諭しながらも、僕は妖魔との間合いを詰める。
「くっくっく…そりゃそうだ…俺もおカマを相手にする趣味はないぜ。」
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