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「夏……と言えば!」
放課後の理科室の中で、相模亮は唐突に声をあげた。
もうすぐ、小学校も夏休みに入る。
遠くに聞こえる蝉の音に併せて、校門付近から下校する同級生の声が聞こえた。
「……知るか」
下敷きをうちわ代わりにして、自分を仰ぎながら、天田賢治はそう呟いた。
「情熱が足りないぞ!天田くん!小学校最後の夏休みを前に、我々『桜台第三小学校新聞部』も何か大きな業績を残さなければならないのだよ!」
そう言いながら相模は両手を広げて天を仰いだ。
「……で、夏と言えば何なの?ボク、暑いの苦手なんだからさぁ、早く決めて帰ろうよぉ」
机に突っ伏して、汗でずり落ちる眼鏡を上げながら、神野拓海は呟いた。
オホンと一つ咳払いをして相模が口を開いた。
「夏と言えば、『怪談』だろ。怪談と言えば……そう!この桜台第三小学校に伝わる、あの『七不思議』だよ。俺たちで、その謎を解明すれば……大スクープになるぞ」
「……七不思議って、あの、『理科室の人体模型が動く』とか『夜中の12時に勝手に音楽室のピアノが鳴る』とか、だろ?」
「そんでもって、その七不思議を全部聞いた人は魂を吸い取られるとかだっけ?」
二人の言葉に相模がうんうんとうなづく。
「だから、この謎を俺たちで解決しようぜ!」
「アホくさ……」
天田が欠伸をしながら、壁に椅子ごと寄りかかる。
「相模くん、そう言うの好きだよねぇ。この前も、家のお寺の数珠持ち出して、『弁財天』呼び出すとか言ってたもんね」
「うっ……そりゃあ、そうだけどさ。大体、神野の方が本当は神様呼び出せるだろ?家、神社だし」
「それ迷信、迷信」
神野は大きな体を更に机に伸ばした。
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