8.みちゆき

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  赤い染みが広がっているような空の方へ、二人は歩き出した。   蛇骨はこれまでとは打って変わって、むっつりと歩を進めている。 龍羅も黙って蛇骨の後から歩いていた。     空の赤い染みは次第に色の濃淡を変えつつあった。 赤にこれほどの階調があったのかと気付かされるほどに。 蛇骨はこの色の移り変わりで時を読んでいたのだろうか。 先を行く蛇骨の背を見ながら、そんな風に龍羅が思いに耽っていたとき。   「…!」 蛇骨が突然、つんのめるようによろめき、しゃがんだ。 小さく舌打ちして立ち上がる。 手には脱いだ草履を持っていた。 「どうした」 「なんでもねぇ」 蛇骨は振り向かず、つっけんどんに返した。 そのまま、また歩き出したが、無数に転がる小石を避けて歩くのは難しく、裸足で行くには辛そうに見てとれた。   野戦場をへめぐり過ごした足にしては、蛇骨の足裏は実に柔らかである。 床を共にして、気付いたことだ。 生まれの貴賎はそんなところから知れたりする。 蛇骨の踵は生来、人を使うものであることを示していた。   「蛇骨、」   龍羅は蛇骨の背後に回り、抱えようとした。 だが、そこは戦場を廻り暴れていた蛇骨のこと。 気配を察知するやいなや、さっと向き直り、後ろへ飛びすさった。
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