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赤い染みが広がっているような空の方へ、二人は歩き出した。
蛇骨はこれまでとは打って変わって、むっつりと歩を進めている。
龍羅も黙って蛇骨の後から歩いていた。
空の赤い染みは次第に色の濃淡を変えつつあった。
赤にこれほどの階調があったのかと気付かされるほどに。
蛇骨はこの色の移り変わりで時を読んでいたのだろうか。
先を行く蛇骨の背を見ながら、そんな風に龍羅が思いに耽っていたとき。
「…!」
蛇骨が突然、つんのめるようによろめき、しゃがんだ。
小さく舌打ちして立ち上がる。
手には脱いだ草履を持っていた。
「どうした」
「なんでもねぇ」
蛇骨は振り向かず、つっけんどんに返した。
そのまま、また歩き出したが、無数に転がる小石を避けて歩くのは難しく、裸足で行くには辛そうに見てとれた。
野戦場をへめぐり過ごした足にしては、蛇骨の足裏は実に柔らかである。
床を共にして、気付いたことだ。
生まれの貴賎はそんなところから知れたりする。
蛇骨の踵は生来、人を使うものであることを示していた。
「蛇骨、」
龍羅は蛇骨の背後に回り、抱えようとした。
だが、そこは戦場を廻り暴れていた蛇骨のこと。
気配を察知するやいなや、さっと向き直り、後ろへ飛びすさった。
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