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秀が倒れ、そのまま落ちて地面に伏せた。
セリア「えっ!? ちょっと、秀?」
麒麟は秀が落ちると、すぐさまその歩みを止め、首だけ回してクォーツのような瞳でセリアを見つめた。
その瞳は語っている。速く降りろ、と。
基本的に召喚獣は別世界の生物。
その別世界の生物をこの世界に引き留めておく為には絶えず霊力を注ぎ、召喚獣と自分の間に繋がりを創る必要がある。
当然、召喚者が気絶すれば霊力の供給はストップする。そうなると召喚獣は僅かしかこの世界に留まる事が出来ず、その後は強制的に元の世界に帰還されてしまう。
ここでセリアは考える。
まず、セリアは服を着ていない。
コレは我慢すればいいだけ。
次に、帰り道がわからない。この場で帰り道を知るのはさっきから迷わず進む麒麟と秀のみ。
つまり、どちらかの助けが必須。
さらに、秀は気絶している、もし麒麟が居なければセリアは秀を抱えて歩くハメになる。
いくら秀が痩せ気味でも、セリアはか弱い女の子にカテゴライズされているために無理だ。
そして、麒麟はたとえ歩きでも自転車並の速さ。
仮に、秀を抱えたままセリアが歩くとなると、ゲゼルが追っ手を出している場合は間違えなく捕まってしまう。
つまり、この場において麒麟の助けが絶対に必要なワケ。
セリア「麒麟。お願い、力を貸して! 私が秀の代わりに霊力を注ぐから」
それが分かったセリアは麒麟の瞳を見つめながら涙ぐんで懇願した。
麒麟「………」
セリア「お願い。秀を…助けて、このままこんな所にいたら、秀死んじゃうかもしれない」
死んだように眠る秀は、よく見ると瞼に濃い隈ができ、眠っているにも関わらず大量の汗をかいている。
重度の疲労症の症状だ。
確かに、このまま寒い夜空の下で放置プレイを決行すれば、汗によって発生した気化熱で体温は奪われ、免疫機能が低下している今なら1日で肺炎に成りかねない。
麒麟「………」
それでも麒麟は沈黙している。
一応、こんな状況の時に『代理召喚人』というものがある。コレに成れれば、この世界に留めておく為の霊力を代理召喚人に行える。
しかし、コレには召喚獣の合意が必要なのだ。
セリアはそれに成ろうしているのだが、相手は神獣、可能性は極僅かだ。
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