第16話 黒衣の裾踏姫㊦

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「分かりました。でも、わからないことばかりですね。なぜ、開かずの間が増加しているのか。それに、なぜT市は理想郷化を急ぐのか」 (章介、それだけじゃない。もっとある) (・・・まず、冥府の武器だ) この世の刃では切れぬモノを切る冥府の武器。名に冥府と付くぐらいだから、冥府から来た武器なのだろう。ならば、いったい誰がこの世に持ち込んだのか。  (そして、裾踏留めの呪術だ) 神隠しから人間を守るために編み出された呪術。しかし、それにしては強力すぎる。血液さえ呪縛してしまうのだ。本当に神隠しのためだけに編み出されたのか。 (最後に、指輪だ) (・・・) (・・・) (・・・) (・・・いや、これに関しては止めておこう。こんな理不尽極まりない物、考えるだけ無駄だ) などと俺が物思いにふけっていると、金属の擦れるようなチャラッという音が微かに聞こえた。 (ん?) 「どうしました、先輩?」 「・・・いや、何でもない」 「何か、難しい顔をしていましたよ?」
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