第16話 黒衣の裾踏姫㊦

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「先輩、せっかく途中までいい事言ってるのに、いつも一言多いんですよ。それって変態の性(さが)ですか?まあ、心配しないでください。茜のことは分かっていますから。茜ともども努力していきます。・・・だよな、茜?」 「ん?ここにいるのか?」 「ええ、最近わかるようになったんです。茜がそばにいると、なんとなく。茜、出ておいで」 「・・・」 しばらくの間、露天には湯の落ちる音だけが響いていたが、やがて女湯と男湯を隔てる竹柵の真中から、茜が上半身を現した。 「茜、風呂とトイレには付いてくるなと言ってるだろ?」 章介があきれたように言うと、茜はふてくされた表情になった。 「私は嫌だって言ったのよ。だけど、あの子達が様子を見て来いってうるさいのよ」 「あの子って、美奈さんと夏奈子と沙恵?」 「そうよ。望月拓郎の傷が心配なんでしょうね」 「先輩は僕に任せてくれ、そう伝えておいてよ」 「わかったわ」 茜は章介にうなずくと、今度は俺の方を見た。  「拓郎、私と章介はきっと上手くいくわ。他人の心配などしてないで、傷の治療に専念なさい」
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