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「それでは、質問はこの位にして、早速、コンサートで公表予定&発売予定の死神のKiss、CW(カップリング)のDAISUKI+三(ダイスキ・プラススリー)を特別にお届けしましょう!」
本当はもっと質問をしたかったのだが、江里があまりにおかしな冗談を言うので、予定に無かったカップリングの曲を含め、2曲、ラジオでかけることにした。
死神のKissを流し、マイクのスイッチを切る。
「私を救う為に 貴方は現れた 私の心 捕かまえてしまう
貴方がくれた死神のKissが 私の心 震わすの~」
R&Bのアレンジの利いた、大人の曲が流れ出す。
大祐が江里の目の前から消えて、三ヶ月が経った。
五月の春の陽気に包まれた季節から、夏の暑い季節へと変わっていた。
今日は大祐がずっと楽しみにしていた、江里の東京ドームのコンサートが開催される日だった。
この日の為に江里は必死に歌を練習して、大祐の為に曲を作った。
自分の心を捕らえて離さない、あの死神の為に。
――何処かで聴いてるんでしょ、大祐。と、江里が呟いた。
彼の為に江里はまだアイドルを続けている。
きっとまた何時か、あの特攻服を着て神風のハチマキを絞めた男が、目の前に現れるその日の為に。
そして、彼が生き返る為の理由である、今日のコンサートを何としても成功させ、楽しみにしてくれていたアイツに見せるために。
ラジオの収録を終え、江里はコンサート会場の東京ドームへ急いだ。
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