第3章 プロローグ2

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さて、今度こそ始めるか。 私はパソコンと連動させたキーボードを叩き始めた。 集中して作業した結果、1曲出来上がった。 良いメロディを思いつくのは、いつもとは限らない。 考えても考えても、浮かばない時は浮かばない。 でも、今日は「お!これは!」と思うのが頭に降りてきた。 結衣の詞の意味をちゃんと理解している私に任せれば、結衣も満足な曲だと思う。 「ただいま~」 ちょうど結衣が帰ってきたようだ。 「お帰り~」 何かいいことがあったのかな? 結衣はいい顔をしていた。 「どう?できた?」 「うん。聴いてみて~」 私は結衣がソファに座るのを待って、スタートさせた。 パソコンに繋いだスピーカーから新曲が流れる。 結衣は自分の作った詞を当然覚えている。 目をつぶって流れてくる曲を聴きながら口ずさんでいた。 指先でリズムを取り始め、段々と身体の揺れも大きくなる。 曲が終わった。 結衣の動きは止まったけど、まだ目をつぶっている。 「いいね!」 (おもむろ)に目を開けた。 「そう?」 「やっぱり、由梨の曲は最高!」 「詞がいいからね~」 二人で笑った。 「スコアは?」 「もうプリントした」 「じゃあ、今日さっそく練習してみる?」 「そうだね~」 ベースとドラムスの二人も腕がいいし、センスもいい。 今日の練習だけで、来週のライブには素晴らしい演奏ができると思う。 「もう一回聴かせて」 「うん」 私は曲をスタートさせると、また目をつぶって口ずさむ結衣を、頬杖をついて机から見つめていた。 彼女の満足そうな笑顔が、私の心を暖かくする。 (結衣、結衣が楽しそうだと私も楽しくなるよ) 私はいつもそう思う。 おっと、もう時間かー。 では、またね!    
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