第十六章 ~絶望の中の希望~

22/26
27421人が本棚に入れています
本棚に追加
/388ページ
「僕に快翔が深い眠りに就いたことを教えてくれたのは、ライナー君だったんだよ……僕が快翔を助けに行った時には、もう彼が出ていたんだ」 「ライナーって確か快翔にとっては、アタシにとっての氷姫と同じような存在よね?なんでそいつが出て来てんのよ?」 「さぁ……僕はそこまでは分からないよ」 悠斗は答えることが出来なかったが、代わりに条威が口を挟んだ。 「ライナーにとって快翔は宿主だ……その宿主に死なれては困るから、無理矢理入れ替わったのだろう……そして無理矢理入れ替わったことの反動と、この後のことを考えて、快翔の意識を眠りに就かせたはずだ」 「えっと……入れ替わった理由は分かったけど、後のことってどういうことよ?」 玲奈は入れ替わった理由は理解したが、それと眠りに就かせた理由を条威に尋ねた。 「快翔やお前達がライナー達の力を受け継ぐためには、まず理解をすることから始まる……ライナーはそれを分かっていて、なおかつ快翔が深い傷を受けてしばらく動けないことを利用して、快翔を深く眠らせて長い時間をかけて理解させるつもりだ……もっとも失敗すれば、快翔は確かに目覚めないかもしれないがな」 条威はそう説明して、玲奈の腕を離した。 「俺が今言ったことを理解出来たなら、後は快翔を叩き起こすなりなんなり好きにしろ……もっとも出来ないだろうがな」 そして確信めいたような言葉を残して、口を閉ざした。 一方の玲奈は理解出来たのか、悔しそうに唇を噛み締めて、先ほどまでのように悠斗に快翔の下に連れて行くように言えなかった。 もしここで快翔を起こしたら、確かに快翔は戻ってくるかもしれない。 ただもしそうしてしまったら、自分が条威が賭けている希望を潰すことが分かってしまったのだ。
/388ページ

最初のコメントを投稿しよう!