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私はそこで手を止めた。
すいすいと書き進めた詩は、やっぱりと言うか何と言うか、私の傷をえぐる。
「綺麗な詩だね」
突然背後から声がして、私はビクッと体を震わせた。慌ててノートを閉じて振り向くと、サークルの先輩が立っていた。
「……勝手に見ないでください……っ!」
私は恥ずかしさに頬を染める。
「隠さなくてもいいのに」
先輩の繊細な指が、すっとノートに伸びて、私ははっとしてノートを掴む。
「見せてくれないの?」
先輩は少し残念そうに笑う。
「完成したら……見せますからっ」
ノートを取られまい、と、私はそれをきゅっと抱き締めた。
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