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「歯車ってさ…」
「え?」
「歯車って、時計のイメージがあるんだけど」
先輩はにこっと笑った。
「え、はい。私もです」
私には先輩の言わんとするところが理解出来ず、首を傾げる。
「『時間』を表す表現をどこかに入れたら、もっとよくなると思うんだけど」
「あぁ!なるほど!」
私はぽんっと手を打つ。
「例えばさ」
「え?」
「………」
「…先輩?」
先輩が真剣な目で私を見つめた。
「いつか、気付いてくれるだろうか。時を刻むのを止めた歯車の上で、君が追い付くのを待っている僕に」
「あ………」
私は言葉を探してたじろぐ。
「なんてね」
先輩は悪戯っぽく笑って、私の座る机の端を、すっと撫でてその場を去った。
私に、少しの動揺を残して。
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