しがない魔具師

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カンカンカン―――― 滴る汗を乱暴にTシャツの袖で拭い、再び手にした金づちで熱した鉄を打ち付ける。 ごうごうと燃え盛る炎。 きっちりと閉められた窓のせいで、かなり蒸し暑い室内。 そんな中でも、一心不乱に金づちを握っていた。 拭いきれなかった汗が、真っ赤な鉄の上に落ちる。 その瞬間ジュッと音を立て、直ぐさま蒸発する。 それでも打ち付けながら曲げっぱなしの背筋を伸ばし、その鉄を持ち上げていろいろな角度から見た。 そして一人満足したように頷き、持ち上げていた鉄を水の中にほうり込んだ。 それと同時に上がる、ジュゥウという音と視界を無くすほどの水蒸気。 それに一瞬だけ目を向けるが、汗でべたべたになったTシャツを脱ぎながら部屋を出た。 部屋を出た瞬間の、冷たい空気。 男はその風を気持ちよさそうに受けると、そのまま端にあるシャワー室へと向かった。 .
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