人魚ノ泡

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人魚ノ泡

人魚の恋を知っている? 己の命を投げ出してまで 愛する者の幸せを祈った 僕はそんな愚か者にはならない 僕を見てくれない人間に 愛を向けるのは限りなく無意味だ それでも愛を唄うなら 二人で泡になって消えてやる そう、思ってきたはずだった 船が浮いてて人がいて そいつは僕を見つめて やさしく僕に微笑んで 僕の頭を撫でてキスをする 嗚呼 どうか頼むよ 中途半端な気持ちなら そんなにたやすく触れないで 僕のココロを侵略し 僕のカラダの原動力 君のことを考えながら 夜中に何度も幸せに浸るなんて 何一つ僕らしくないんだ 君が笑うと嬉しいなんて そんな恥ずかしい事 この僕が 言えるわけないじゃないか 僕が触れる 君に触れる 叶わない恋なのに 届かない愛なのに 何でこんなにも柔らかで 暖かな温もりを与えるの 離れられなくなるじゃないか 悲しくて涙が出るじゃないか こんな無意味に嘆いても 君と結ばれるわけじゃないのに 嗚呼 どうか最後の我儘です 僕に触れて下さい 僕からの愛も 渇きを知らない涙も 君の温度も 幸福に感じた日々も 他の誰でもない 君が包み込んで捨てて下さい こんなに重たく広がる感情を 僕が持てるわけないじゃないですか -END-
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