~2・親族の証言~

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~2・親族の証言~

――ええ、カズヤの事ですか?……はい、カズヤは私の弟です。ただ一人の……子供のころカズヤは病弱でしてね。だからかもしれませんが、カズヤは人一倍ヒーローに憧れていました。プロレスラーや空手家、ボクサー……格闘技全般が好きでした。またとても賢く、高校では1、2を争うほどでした。友達はあまり多いほうでは無かったようですが、親しい友達はいたようです。大きくなってからは身体も丈夫になり、活発に……大学に入ってからは、それはますます顕著になっていきました。時期が時期だけに、大学活動にも関わっていたのかも知れません。 ……あの頃のカズヤは、「活きて」いました。バイトをして金を稼ぎ、大学へ行って知識を学ぶ……生きている実感があったのだと思います。本当に、楽しそうでした。父が、あんなことを言い出すまでは。  それは、カズヤの就職が決まった後の事でした。父は、カズヤを自分の会社に無理やり就職させたのです。内定先の会社に辞退の電話をいれ、仕送りも止め……当然カズヤは反抗しました。しかし父には逆らえず、最終的にはこの田舎に帰って来ました。その時には、もうカズヤは、あまり笑わなくなっていました……。カズヤはとにかく働きました。朝早くに出社し、他人以上に働いて、暇な時間は資格をとるために勉強をし……もしかしたら、転職を考えていたかもしれません。あるいは、唯の暇つぶしだったのかも…… 今となっては、それもわかりません。けれども私には、淡々と残りの人生を消費していってるように見えました……。
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