~1・親友の証言~

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――カズヤ? よく知ってるよ。……ああ、友達だ。今となっては友達だった、か。あいつと俺が最初に出会ったのは小学校の時だったな。……なに、話が長引きそうだって?いいじゃねえか、時間はたっぷりあるんだから。……でだ、小四の時、当時俺はガキ大将を気取っていてな。事あるごとに威張っては迷惑をかけ、親に怒られてた。でかい口をたたいて、ホラ吹いてな。兎に角目立ちたかったんだよ。最初のころはクラスの皆も俺の話を信じてたっけか。  「裏山にイエティの足跡があったぞ!」だとか「これは未来から来た暗号だ!」とかな。なんてことはねぇ、只の熊の足跡だったり、どっかのガキの落書きなんだけどな。終いにゃ自分で足跡を捏造したりさ。 ……まぁそんなことをしてたら勿論愛想つかされてな、四年の秋には立派な狼少年の完成だ。皆俺から離れてった。さみしかったよ、自分がいねえようにすら感じた。……そんな時だ、カズヤと知り合ったのは。一人で自分の家に帰ってたら、青っ白い顔をした、いかにも病弱ですって顔をしたガキがついてくるんだ。オドオドしてて、物陰に隠れながら。そいつは毎日来やがった。そして、やっぱり黙ってついてくるんだ。最初は気味が悪くて、早足で帰っていたんだが、段々ムカついてきてな、とうとう怒鳴ったんだよ。「なんか用か!気持ちわりい!」って。そしたら、そいつなんていったと思う? 「……イエティ探しに行かないの?」 って言ったんだ。驚いたよ、自分でもそんな話をしたこと忘れてたし。「はあ?んなもん居るわけねぇだろ!」って言ったらそいつ泣き始めたんだ。ワンワン泣いてた、人目も気にせずに。その時俺は思ったんだよ。「こんな真っ直ぐな奴を俺は騙してたのか」ってな。自分が情けなくなってよ、俺もワンワン泣いた。傍から見たら意味が分からなかっただろうな。そうしてるうちにあいつは先に泣きやんで、俺に「何で泣いてるの?」なんて聞きやがったんだよ。信じられるか?俺も聞かれて馬鹿馬鹿しくなってさ……  可笑しくなって、大声で笑ったんだ。そしたらそいつも笑ってな。それが、カズヤとの出会いだった。
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